県と市の二重行政
私が岩手県福祉総合相談センターで働き始めた時、電話応対の注意事項として教わったことは、盛岡市の「総合福祉センター」と間違って電話をかけてくる人がいるから気をつけるように、ということでした。
盛岡市には、岩手県の福祉総合相談センター(本町通)と、盛岡市の総合福祉センター(若園町)があり、盛岡市の総合福祉センターに電話をかけるつもりの人が、間違って岩手県の福祉総合相談センターにかけてしまい、間違っていることに気づかず、話を続けてしまうことがよくあるとのことでした。これは実際、私自身も勤務をする中でよく経験しました。確かに、同じ市内の施設で、ここまで似た名前であれば、間違えるのもやむをえないでしょう。もっとも、これらのセンターの入居団体の業務を見ると、市は地域に密着した、県は専門性の高い業務を担っていると捉えられ、名前が似ていることをもって二重行政とは言えないように思います。
ただ、他の施設はどうでしょうか。
・岩手県立図書館(盛岡駅西通)と盛岡市立図書館(高松)
・岩手県営武道館(みたけ)と盛岡市立武道館(住吉町)
・岩手県営スケート場(みたけ)と盛岡市アイスリンク(本宮)
・岩手県営体育館(青山)と盛岡体育館(上田)
・いわて産業振興センター(北飯岡)と盛岡市産業支援センター(大通り)
・県営住宅と市営住宅
主張として考えられるのは、例えば県立図書館は市立図書館と異なり、広域の資料収集を担い、市町村図書館職員の研修や連絡調整を行なっている、ということなどです。しかし、それならば盛岡市の図書館において、県の事業として、市町村図書館職員の研修を行えばよく、同じ市内に施設として図書館が2つもある必要はないように思います。まして、武道館、スケート場や県営住宅は???です。
地域の仕事は、基本的に市町村が行い、都道府県は、①広域なもの、②市町村の連絡調整に関するもの、③規模や性質上市町村が行うことが適当でないものを行うとされ(地方自治法2条5項)、競合しないようにしなければならないとされています(同条6項)。この点、岩手県の福祉総合相談センターは、精神保健福祉や児童相談所といった専門的な業務が多く、③にあたると考えられますが、図書館、武道館、体育館や県営住宅はどれにあてはまるのでしょうか?
この点、好例だったのは、岩手県営野球場と盛岡市営野球場が一緒になった「いわて盛岡ボールパーク」です。この新球場の誕生には、施設を集約して新設する際の有利な条件の起債が認められたことがあり、この制度を作った国のファインプレーがあったのですが、集約が進んだのはいいことでした。
図書館では、県と市が共同運営するものが高知県と長崎県にあり、岩手県でも同様な方法での運営が考えられます。
県営住宅では、大阪府が府営住宅の大阪市への移管を完了させました。
このような集約化により、管理運営コストの削減につながり、次世代への投資を行うことができるようになるので、県と市は協議を行い、二重行政の解消をどんどん進めるべきです。
もっとも、市の体育施設を管理する盛岡市スポーツ協会も、市職員の天下り先になっており、改革の妨げになっているのかもしれません。だからこそ、しがらみを打破する実行力が必要なのです。