少子化対策と子育て支援
統一地方選挙において、最も争点とされているのが、少子化対策と子育て支援策です(読売新聞2023年3月19日1面)。人口減少は、社会の高齢化とも一緒になって、現役世代の社会保険料が増加し、それにもかかわらず高齢者にとっても十分な医療・年金給付が受けられないという、誰にとっても良くない状況が生じます。人口減少はいまに始まったことではありませんが、ようやく国家的課題として、対策が必要と考えられるようになりました。
では、日本で一番人口減少が進んでいる地域はどこなのでしょうか?それは、青森・秋田・岩手の北東北三県です。これらの県は、この5年間、年1%の割合で人口減少が進んでおり、この5年間でおよそ21万人も人口が減少しました。この21万人という数字は、岩手県の沿岸市町村全ての人口を足し合わせた数とほぼ同じです。仮に、100万人の人口が1%ずつ、100年間減り続けるとすると、人口は約36万6千人になってしまいます。そして総人口の減少よりもっと深刻なのが、現役世代の減少です。医療・年金という国家的課題以前に、地域では、バスの運転手の不足によりバス路線が維持できなくなったり、飲食店が働き手不足で時短営業したりと、現実的な問題が身近に感じられるようになってきました。
では、なぜ少子化が進んでいるのでしょうか?一つの要因として考えられるのが、晩婚化・未婚化の進行です。「まだ早いと思っている」「適当な相手に出会わない」などがありますが、まず、前提として、子どもを産むのも、結婚するのも、しないのも、個人の自由である、ということです。私たちの文明は、この「個人の自由」を尊重する、という軸をもとに発展してきました。したがって、とるべき公共政策としては、結婚や、子育てを望んでいるが、支障となっている事柄を分析し、解消することとなります。
この点、自由意志以外に支障となっているのは、「お金がない」ということです。若い世代の可処分所得は、この20年間、増えていません。これは、日本経済の低成長が要因となっているほか、負担する社会保障費が増えていることで、手取りが増えない、という問題があります(荒川和久https://news.yahoo.co.jp/byline/arakawakazuhisa/20221202-00326509)。そこで、最近では夫婦共働きが主流となっていて、父母がフルタイムで働き収入を得ようとすると、今度は子育ての時間が劇的に少なくなってしまいます。8時半から17時半まで仕事があるとしたら、8時前には子どもを預け、18時になる直前に子どもを迎えに行く。ちなみに、3〜5歳児の睡眠時間はお昼寝を除くと10時間程度必要なので、7時に起床するとして、21時には寝せていなければいけません。そうすると、18時過ぎに帰宅してから、21時に子どもを寝かせるまでの2〜3時間に、食事・片付け・お風呂・寝かしつけ・・・など超絶ハードワークが必要になります。そしてこのルーティーンは、あくまで平時のもので、仕事の残業、子どもの病気、その他アクシデントがない時のものであるということです・・・
そこで、行政としては、この大変な子育てを支えるため、保育の拡充と無償化を推進してきました。これについては評価できます。しかし、保育園を卒園したら子育ては終わり、ではありません。子どもの年齢別の子育て費用を見ると、一番かかるのが「教育費」であり、小学生になると学校教育費のほか、学校外教育費として習い事のお金もかかり始めます。この傾向は中学校でも続き、高校になると今度は授業料、塾代が一気に増えます。そして、よく食べるようにもなります。大学に入ると学費に一人暮らし費用などがかかり始めます。
このように、子どもが独り立ちするまで、相当のお金が必要になることは、子育てをする人たちにとっては常識として共有されていると考えます。それなのに、一時的な支援金・給付金を支給しても、焼け石に水です。また、経済的困難のある家庭向けの就学援助費もありますが、そもそも親たちは子どもが困らないように一生懸命働いているのです。したがって、子育て支援策としては、どのような家庭でも、子育て期間を通じて、継続的に、経済的負担を軽減する施策が必要となります。
ではどのような施策が有効でしょうか。効果的な施策は、現金給付よりも現物給付と言われており(山口慎太郎 https://news.yahoo.co.jp/byline/arakawakazuhisa/20221202-00326509)、全ての子どもが負担している現物、となるとターゲットとなるのが給食費です。盛岡市の給食費は、年間約5万円です。さらに、この給食費は、盛岡市の場合、公金化(地方公共団体の会計)されておらず、学校の会計であり、学校が(うちの小学校は副校長と、なぜかPTAが)徴収、会計しており、学校にとってはこの手間も負担があることから、給食費が無料となると、この負担もなくなり、一石二鳥となります。
財政が厳しからできない?のでしょうか。岩手県内の市町村で給食費無償化を実施しているのは九戸村など4自治体、隣県では、青森市が実施しています。盛岡市にはできないのでしょうか?やるべきではないのでしょうか?
いま、日本や地域に必要なのは、人口減少のような下降基調を打破する改革による次世代投資です。まして、人口減少が全国で一番進んでいる北東北にあって、県庁所在地である盛岡市は、周辺の滝沢、矢巾、紫波町で増えている人口が、減少しています。盛岡の子どもたち、私たち、そして地域の未来のために、今やるべき政策が、給食費の無償化です。